器質疾患による頭痛

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いろいろな病気に伴う症状としての頭痛(器質疾患による頭痛)

 頭痛がして心配しておられる場合、多くの方は脳に何か異常がおこったのではないか、脳の悪性の病気、怖い病気にかかったのではないかということを心配されてるようです。頭痛が主な症状となる病気には多くのものがありますが、代表的なものとして、クモ膜下出血をはじめとする脳血管の病気、脳の腫瘍や感染症などがあります。ひどい頭痛がする場合や、頭痛が長く続く場合は一度専門医の診察を受けておくとよいでしょう。特に急におこった頭痛で、これまでに経験のないひどい頭痛の場合はすぐに専門医に受診してください。命にかかわる危険な頭痛の可能性があります。

 慢性的に頭痛がある場合や、お薬を使用してもあまりよくならない場合には、脳のCT、MRIや副鼻腔、頸椎のX線検査などを一度は実施してもらっておかれるのがよいでしょう。眼科疾患、歯科・口腔外科疾患、耳鼻科疾患の他、貧血や肝障害、甲状腺疾患など内科の病気が原因で頭痛がおこる場合もあります。

 頭痛をおこしやすい様々な疾患についてポイントを表5にまとてあります。

 頭痛の始まり方が脳血管に由来する頭痛の診断の参考になります。くも膜下出血に伴う頭痛の特徴は頭痛が起こり初めてからピークに達するまでがきわめて短時間であるのに対し、片頭痛では少なくとも5分、通常は20~30分かかることで区別がつきます。ただし、まれには例外もあって、突然頭痛が起こった後、徐々に頭痛の程度が強くなるクモ膜下出血もありますので、これまでに経験のない激しい頭痛の場合は、やはり専門医に御相談ください。良性労作性頭痛は運動時などに急におこる激しい頭痛で、症状からはクモ膜下出血と区別できないことがしばしばあります。良性労作性頭痛は病名にもあるとおり、命にかかわることのない良性の頭痛です。

 脳底部に病変があると後頭部に、大脳半球の病変では前側頭部に頭痛がおこりやすいとされていますが、必ずしも一致しません。眼痛を眼周囲の頭痛と感じることがあり、前頭部や眼周囲の頭痛では眼の病気の可能性も考えておく必要があります。副鼻腔炎(蓄膿)や副鼻腔周囲・頭蓋底の腫瘍などでも眼周囲、前頭部の頭痛がおこることがあります。逆に眼周囲の頭痛を眼の病気と考えて眼科に受診されている場合も少なくありません。側頭下部~耳介部の頭痛の場合には、ヘルペスや耳疾患、側頭動脈炎などの可能性もあります。

 脳腫瘍などによる頭蓋内圧亢進(脳圧亢進)の頭痛では嘔吐する割には悪心(吐き気)が軽いことが多いのが特徴です。嘔吐した直後でも普通に食事ができるような場合には頭蓋内圧亢進による頭痛を疑います。また、朝、目覚めた直後に強い頭痛の場合にも慢性頭蓋内亢進のことがあります。

 頭痛に伴って半身麻痺(片麻痺)、四肢麻痺、感覚障害や失語など脳の異常でおこるような症状(局所神経兆候)がある場合には注意が必要です。頭痛とこれらの症状の出現順序も重要です。前兆を伴う片頭痛では通常、前兆としての神経症候が消失してから頭痛が起こりますが、脳の器質疾患では同時に起こることが多いとされています(ただし例外もあります)。

 発熱の有無は髄膜炎や脳炎の診断に重要なポインですが、脳炎の初期には発熱が目立たないこともあります。

 最近数ヶ月以内に頭部を打撲したことがあるかどうかも大切です。慢性硬膜下血腫は頭部打撲後数ヶ月してから症状が出ることがあります。常習飲酒者ではご本人が記憶していなくとも、酩酊時に頭部打撲をしておられることがあります。


(国際頭痛学会1988、頭痛研究会邦訳)